名前が似ている尿素と尿酸。この2つには共通する点と決定的に異なる点があります。

尿素と尿酸、化学的にみれば全く違います。しかし、生物にとっては毒素であるアンモニアを体外に出すという共通した点があります。

【関連】
尿酸ってどんな成分??
ルテオリンとはどんな成分?化学的に見てみよう


Contents

尿素と尿酸の違いは?

分子の形を見ると全く違いますね。尿素はシンプルな形をしているのに対して尿酸はちょっと複雑。共通点は、両方とも炭素C、酸素O、窒素N、水素Hからできているという点です。ちなみに尿素は初めて人工的に合成された有機物。昔は炭素を含む化合物(=有機物)は生命しか作れないと考えられていました。

重要な点は、両方とも窒素を含んでいるということ。これは、後に説明する体に有害なアンモニアを解毒し体外に出すということに関わっています。

そしてもう一つ大きな違いとして、水への溶けやすさがあります。

  • 尿素:水に溶ける
  • 尿酸:水に溶けにくい

尿素は分子が小さいのに加え、炭素が1個に対し窒素や酸素が3つと多く水に溶けやすいです。一方、尿酸は分子のサイズが大きいのに加え炭素5個に窒素酸素が9個と炭素の割合が多く水に溶けにくいです。(他にも極性などの理由はあります)


スポンサーリンク

尿素も尿酸の共通点!有害なアンモニアを体外に出す

どちらも尿の成分に含まれている

たんぱく質は、筋肉やDNAの成分になるなど非常に有用な栄養素です。しかし、たんぱく質(アミノ酸)から生じるアンモニア(NH3)は、動物にとって有害である一面もあります。例えば、肝臓が傷害されると血液中のアンモニア濃度が上がり意識障害を引き起こします。

そのため動物はアンモニアをいろいろな物質に変えて解毒をしています。その一つとして、肝臓でアンモニアを尿素という毒性を抑えた物質に変換しています。他にも、発生したアンモニアはグルタミンやグルタミン酸などの特定のアミノ酸を作るのに使われます。グルタミンはプリン塩基というDNAの構成成分をつくるのに使われ、プリン塩基は尿酸に変換されます。尿酸は結果的に窒素を排泄していることになります。そして尿には、これら物質を体外に出す役割があります。

尿素か尿酸かは動物によっても違う

ヒトでは窒素は主に「尿素」として、また、核酸(DNA)由来の窒素は「尿酸」として排泄されます。しかしこれは動物の種によって異なります。

例えば、水中で生きている生物はそのままアンモニアとして周りの水中に排泄します。これは周りに潤沢に水が存在しているためと考えられます。しかし、陸に上がると、使える水が徐々に限られてきます。そこで生まれたのが、尿素と尿酸です。アンモニアが発生したらそのつど排泄することができないので、少ない水分で、ある程度溜まったら排泄する様になりました。

哺乳類は主に尿素として排泄しています。尿酸も作りますが、ヒト以外の多くの哺乳類では尿酸を分解する酵素を持っていて、尿酸をアラントインという物質に変え排泄しています。ヒトはこの酵素を進化の過程で失ったと言われています。

両生類は主に尿素です。例えば、おたまじゃくしのときはアンモニアを排泄していますが、変態後のカエルは尿素の形で排泄します。

爬虫類や鳥類は尿素ではなく尿酸で排泄します。これには理由があり、その一つに卵があります。卵は硬い殻に覆われ、外とは隔離されています。しかし卵中でも胚が成長するために栄養素が必要です。その栄養素から出た窒素を排泄する必要がありますが、卵中に尿素の形で放出してしまうと浸透圧が上がり、胚自身の水分も周りに奪われる危険があります。そのため、浸透圧が上がらない様に水に溶けない尿酸という形で排泄します。結晶を卵の中に留めておけばこの様な危険はありません。

他にも尿素は水に溶けやすく浸透圧が高くなるため、水分を多く必要になる点も考えられます。塩を多く含むしょっぱいものを食べたら、浸透圧が上がって水が飲みたくなりますね。鳥はこの様に水分を極力必要としない様にして、体重を減らし飛びやすくしているとも言われています。逆にこの浸透圧を利用して、細胞の浸透圧を調節する(オスモライト)役割もあります。ほんと奥が深いです。


鳥のフンはなぜ白い?

尿酸という水に溶けにくいものにすることによって、人間の様な大量の水を含む尿として排泄せず、糞のような形として排泄することもできます。鳥の糞は白くドロっとしたものと色がついたものが混ざっています。実はこの白いのはフンではありません。この白いものが尿で、色がついたものが糞となります。尿が白いのは、尿酸が結晶化して溶けていない状態にあるからと言われています

2019年、鳥の糞には尿酸が含まれていないという報告がありました。排泄された尿酸は、体外に出るまでに何かしら別の物質に変換されて排泄されている可能性があるとか。ほんとに奥が深いですね。

A re-evaluation of the chemical composition of avian urinary excreta

スポンサーリンク

【まとめ】

尿素と尿酸の違いについて解説しました。尿素と尿酸、化学的にみれば全く違いますが、生物にとってはアンモニアを体外に出すという共通した点がありました。生物が進化の過程で尿素か尿酸どちらを選択していったのか、非常に興味深いです。実は尿素と尿酸と生物の進化の関係、ここで解説したものはほんの一部分にしかすぎません。とても複雑で、尿素と尿酸の研究に人生を注いでいる方もいます。興味がある方はぜひ調べてみてください。そして詳しい方は教えていただけると嬉しいです。

【参考】

さくだ内科クリニック 鳥のおしっこ
多様な環境に生きる動物の体液調節 ―海辺に棲むカエルと陸上に棲む魚―
尿素を利用する体液調節:その比較生物学
A re-evaluation of the chemical composition of avian urinary excreta

おすすめの記事