化粧品やシャンプーに入っている「トリエタノールアミン」という成分。どんな物質か知っていますか??
名前は聞いた事あるけど、どんな物質かわからない。そんな成分の一つだと思います。
ここでは、トリエタノールアミンを化学的に見ていきたいと思います。
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トリエタノールアミンは化学的にどういう成分??
トリエタノールアミンは名前の通り、3つ(トリ)のエタノールがアミンに結合したものです。アンモニアという物質を聞いた事があるかと思います。アンモニアは弱アルカリ性の物質です。トリエタノールアミンも同様に弱アルカリ性を示します。そのため、pHの調整剤として化粧品などに用いられます。
似た様な物質に「トリエチルアミン」があります。両方とも『TEA』と略されるので混合しがちです。「TEA」というと、化粧品界隈では「トリエタノールアミン」が主流のようですが、化学界隈では99%「トリエチルアミン」を想像します。
このトリエチルアミンは、生臭いというか腐りかけの魚のようなキツい匂いがします。トリエタノールアミンも同じような独特な匂いがします。ちなみに魚の生臭さは、トリメチルアミンという成分です。
トリエタノールアミンはどのように使われる?
例えば、手ピカジェルの添加物として以下の成分が含まれています。
ヒアルロン酸Na
グリセリン
トコフェロール酢酸エステル
カルボキシビニルポリマー
トリエタノールアミン
ここで、トリエタノールアミンは、pH調整剤として働いています。
pHは、「H+(水素イオン)」の濃度によって決まります。「H+」が多ければ「酸」に、少なくなればアルカリに近づきます。アンモニアは、「H+」を捕捉しアンモニウムイオンになります。同じように、トリエタノールアミンも「H+」を捕まえることができます。このように「H+」が減る事で、pHが「酸」からアルカリに変化していきます。
カルボキシビニルポリマーという成分は増粘剤として用いられ、「ジェル」をつくる役割があります。カルボキシビニルポリマーの粘度はpHによって変化し、中性〜弱アルカリ性で最も粘度が高くなります。カルボキシビニルポリマーは「酸性」の物質のため、「アルカリ性」であるトリエタノールアミンが加えられます。つまり、トリエタノールアミンはpHを調節する目的で加えられ、間接的に粘度を調整しています。
トリエタノールアミンに殺菌作用はあるの?
名前に「エタノール」がついているため、他のアルコール同様殺菌作用がありそうに見えます。しかし、名前が似ていても、分子構造中にエタノールがあっても、「エタノール」とは全く違う物質です。そのため、殺菌作用などは期待できません。
ラウリル硫酸トリエタノールアミンとは?
トリエタノールアミンは陰イオン界面活性剤としてシャンプーなどにも使われます。陽イオン界面活性剤の代表的な例としてラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム、SDS)があります。そして、その類似成分としてラウリル硫酸トリエタノールアミンがあります。この2つ、何が違うのかというと「pH」と「洗浄力」が違います。
ラウリル硫酸ナトリウムは、「ラウリル硫酸」という「マイナス(酸性)」の成分と、ナトリウムという「プラス(アルカリ性)」の成分が合わさったものです(ナトリウムは水に溶かすと非常に強いアルカリ性を示します)。このようなプラスとマイナスが合わさったものを「塩」といいます。代表的な「塩」に食塩(塩化ナトリウム)がありますね。
この「塩」のpHは、合わさる「酸」と「アルカリ」のpHによって決まります。弱いアルカリ性であるトリエタノールアミンと、強いアルカリ性であるナトリウムの塩を比べると、ナトリウム塩の方がアルカリに近くなります。
油分などに対する洗浄力はアルカリ性であるほど強いとされています。ではアルカリになればなるほど良いのかというとそうではなく、アルカリ性が強まるほど肌や髪を痛めてしまいます。例えば、ナトリウムを水に溶かしたもの(水酸化ナトリウム溶液)は皮膚や髪を溶かします。パイプ詰まりをとるものは、2〜3%の水酸化ナトリウム溶液です。ハンドソープの「ビオレ」やシャンプーの「メリット」は「弱酸性」を宣伝しています。これは、弱酸性にすることで肌や髪を痛める可能性が低くなるメリットがあります。
女性用シャンプーは、そこまで強い洗浄力は求められないため、より弱いアルカリ性でマイルドな洗浄力であるトリエタノールアミン塩がよく使われます。