特茶はサントリーから2013年に発売された初の『体脂肪を減らすのを助ける』特定保健用食品(トクホ)。
そんな特茶の有効成分はケルセチン配糖体という物質です。ここではそのケルセチン配糖体について解説ししていきたいと思います。
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特茶にはどんな成分が入っている?
特茶の有効成分は「ケルセチン配糖体」と呼ばれるものです。それは特茶のボトルにも記載されています。しかし、その横をみると、イソクエルシトリンというまた違った名前が記載されています。
そして裏を見ると、
「酵素処理イソクエルシトリン」とまた別な名前がでてきます。これはどういうことなんでしょう。
ここではまず
- ケルセチン
- ケルセチン配糖体
- イソクエルシトリン
- 酵素処理イソクエルシトリン
この4つについて解説していきたいと思います。
ケルセチンとは?
ケルセチン(Quercetin、クエルセチン、クェルセチンとも言います)はいわゆるポリフェノールの1種でリンゴやお茶、タマネギ、その他多くの植物に含まれています。ポリフェノールは体に良いと言われている通り、抗酸化作用をはじめ、抗炎症作用、血管疾患の抑制作用など様々な作用が報告されています。しかし、これらの作用の多くは、試験管レベルや動物実験レベルでの結果であり、ヒトに対しての効果は未だ議論されており分かっていません。
ケルセチンはいろんな野菜に含まれているため特に意識しなくても1日平均30〜50mg摂取しているといわれています。しかし、当然ですが食事の内容によって変化するため、野菜を取らないなど不摂生な食事をしている場合はもっと低くなります。
100gあたりのケルセチン含有量
- ケール:20mg
- アスパラガス:15mg
- タマネギ:10〜30mg
- リンゴ:4mg
- 緑茶(100mL):2mg
ケルセチンは、玉ねぎに比較的多く含まれている成分です。品種によって差があるそうですが、大体玉ねぎ1個(200g)に約40mgほどはいっています。ケルセチンを多く含有する玉ねぎが開発されていたりしますね。
注目なのが緑茶。一般的な緑茶100mLに入っているケルセチンはたった2mg。特茶500mL中にケルセチン配糖体として110mgという数字はかなり多いということがわかります。
ケルセチンは化学的な特徴からフラボノイドという群に分類されます。カテキンもフラボノイドに分類されています。
ケルセチン配糖体?配糖体って?
配糖体は「糖」が「結合」したもの
物質に糖が結合しているものを総称して『配糖体』と呼びます。例えば、ある成分Aに糖が結合した場合、「A配糖体」と呼ぶことができます。つまり、ケルセチン配糖体とは、ケルセチンに糖が結合したものということになります。配糖体は特別なものではなく、植物がつくる天然成分の多くはこのような配糖体という形で存在しています。もちろん植物だけではなく動物も、私たち人間も配糖体を作っています。(配糖体とは、植物が作る天然物を指すことが多いですが、ここでは植物由来でないものや人工的なものも配糖体として考えます。)
配糖体になるとどうなる?
配糖体とそうでないもの、何が違うのでしょう。
まず違うのは、物理的性質。糖は水に溶けやすい物性を持つため、結合したものの水に対する溶解度を上げる性質があります。また、生物学的性質も異なることもあります。糖が付くことで、生物活性が強くなったりする他、水溶性が上がり、体内に吸収されやすくなることで間接的に活性が上がります。
配糖体はややこしい
糖といっても、グルコース (ブドウ糖)、キシロース、フコース、ルチノース、ジギトキソース・・・など色々な種類があります。違う糖が付けば全く違う物質です。
例えば、「A」に「グルコース」という糖が結合したとすると、「Aグルコシド」、「ラムノース」という糖が付いたら「Aラムノシド」となります。しかし一部の配糖体は、この様な一般的な名前のほかにニックネームのような特別な名前が付けられているものがあります。
例えば、「シアニジン」という物質にグルコースが2つ結合した場合、通常であれば「シアニジン-ジグルコシド」となります。しかし、この名前はあまり使われず、「シアニン」という名前で呼ばれています。他にも、「ソラニジン」という化合物に「ガラクトース」、「グルコース」、「ラムノース」という3つの糖が結合したものは、「ソラニン」と呼ばれています。じゃがいもの芽の有毒成分ですね。
カクテルで例えると、「カシス酒」と「オレンジジュース」は「カシスオレンジ」、「マリブ」に「オレンジジュース」は「マリブオレンジ」ですが「ピーチ酒」に「オレンジジュース」は「ピーチオレンジ」ではなく「ファジーネーブル」。不思議ですよね。
では、ケルセチンの場合はどうでしょう。実はケルセチンも糖が結合すると特別な名前に変わります。「グルコース」が結合した場合、「ケルセチングルコシド」ではなく、次に説明する「イソクエルシトリン」と呼ばれています。
イソクエルシトリンはケルセチン配糖体の1つ
イソクエルシトリンとは、「ケルセチン」に「グルコース」が結合した配糖体です。植物中ではむしろ配糖体の形で存在していることが多いです。柿の皮などに含まれています。
他にも、ケルセチンに「ラムノース」という糖が付けば「クエルシトリン」、「ルチノース」という糖がつけば「ルチン」と呼ばれるものになります。「イソクエルシトリン」も「クエルシトリン」も「ルチン」も、全てケルセチンに糖が付いたものですから「ケルセチン配糖体」と呼ぶことができます。
酵素処理イソクエルシトリンとは?
酵素処理イソクエルシトリンとは、名前の通り酵素を用いて手を加えたイソクエルシトリンです。では酵素を使って何をしているのでしょう?
実は酵素を用いて、イソクエルシトリンにさらにグルコースを結合させています。
イソクエルシトリンはケルセチンに1個のグルコースが付いたものですが、そこにさらに2個、3個とグルコースを結合させたものということです。
グルコースが1個付いたものはイソクエルシトリンですが、2個、3個とグルコースが付いてしまうとそれはもはやイソクエルシトリンではなく全く違う物質です。さらに、この酵素処理、グルコースの個数を制御できません。1個しか付いていないものもあれば5個ついたものもある、そんな状況です。実際に特茶の「ケルセチン配糖体」はケルセチンに1〜7個のグルコースが結合したものと説明されています。
ですので、特茶の成分は総称である「ケルセチン配糖体」と表現しているのです。2個付いていようが、7個付いていようがそれは「ケルセチン配糖体」であることに変わりはありませんからね。
なんでわざわざ酵素処理をするの?
ケルセチンは水への溶解性が非常に悪いです。水にほとんど解けないとされています。配糖体化をすることで、水に解けやすくなりますが、糖が1つ付いたイソクエルシトリンでも、まだまだ水にはほとんど解けない状態です。
ならば、糖をさらに結合させて、もっと水への溶解性を上げようとしたものが、この酵素処理イソクエルシトリンです。私たちの体は、基本的に水に溶けている物質しか吸収しません。ですので、溶解性が上がるということは、体内に吸収される量が上がるということになります。吸収される量が多くなれば、今までに無かった効果も期待できたり、吸収されなかったものが無駄にならなかったり、500mLペットボトルという限られた少ない水にも溶かすことができ、良いこと尽くめです。
【まとめ】
イソクエルシトリンはケルセチンにグルコースが1つ結合したもの。酵素処理イソクエルシトリンは、イソクエルシトリンに酵素を用いてさらにグルコース を結合させたもの。このようなケルセチンに糖が結合した化合物の総称をケルセチン配糖体という。ケルセチンを配糖体化することで、水への溶解度が上がって、吸収される量が増える。
【参考】
- 特茶の秘密
- ケルセチン配糖体で健康の維持・増進に寄与する
- 野菜の機能性研究~たまねぎのケルセチンによる認知機能改善の可能性~
- SDS イソクエルシトリン標準品
- 特許第6429749号
- J. Food Hyg. Soc. Japan 2000, 41, 54