テレビなどメディアで取り上げられることもあるルテオリン。
最近では、尿酸値に有効なデータが認められ、ルテオリンを含有する食品が機能性表示食品として販売されています。
そんなルテオリン、どんな物質なのか知っていますか??
ここでは、化学的や薬理学的に見たルテオリン、そして機能性表示食品としてのルテオリンを紹介したいと思います。
Contents
ルテオリンとはどんな物質?
そもそもポリフェノールってなんだろう
ルテオリンとは、菊の葉やシソ、セロリ、カモミール茶などに含まれるポリフェノールの一種です。ポリフェノールとは、ポリ(たくさん)のフェノールという意味で、フェノール性のヒドロキシ基(-OH)をたくさん持っている化合物の総称です。
ルテオリンはフラボノイド類のフラバン
ポリフェノールの世界は非常に複雑です。ポリフェノールは分子構造の特徴からさらに細かく分けられます。例えばルテオリンは、ポリフェノールのうちフラボノイド類に属します。さらにさらにフラボノイド類も分子の形で細かく分ける事ができ、ルテオリンはフラボノイド類のうちフラボンに属します。
フラボンに似た様な名前でイソフラボンというものがあります。大豆イソフラボンなどで有名ですね。イソフラボンはフラボン同様にフラボノイド類に分類されます。フラボンとイソフラボン非常に似ているのがわかります。
フラボノイド類は似ているものが多い!
ポリフェノールは数えきれないくらいの物質が知られています。ポリフェノールのうち、フラボノイドだけでも数千種類が存在します。大量の種類がある理由の一つに、−OHが付く場所の組み合わせが大量に存在することがあります。上の画像の青矢印の箇所、どこでも良いので−OHが複数個つけばポリフェノールです。2個でもよければ3個でも良い。場所も自由です。途方もない組み合わせが考えられますよね。これはポリフェノールに似た様な化合物が多い理由でもあります。
面白いことに、こんなに似ている物質なのに、ヒドロキシ基の個数やついている場所で生物活性が大きく異なります。ちなみにこのヒドロキシ基がない、素のフラボンやイソフラボンでは抗酸化作用のような生物活性はないとされています。
(生物活性:生物になにかしらの影響を与える力)
ルテオリンの配糖体
さらに、ルテオリンは植物の中では糖と結合した状態で存在するものもあります。このように糖と結合したものを配糖体といいます。植物など、自然界では主にこの形で存在しています。糖が結合しているものとしていないものでは、生物活性が大きく異なる事があります。さらに吸収のされやすさなど間接的にも影響を与えます。
OHの個数や組み合わせで沢山の種類がありました。それに加えて、糖が結合する場所や個数、糖の種類の違いも考えると、本当に無数の種類が考えられます。
ルテオリンの効果・働きは?
ルテオリンにはどんな効果がある??
ポリフェノールといえば抗酸化作用、抗動脈硬化作用などさまざまな効果が知られています。当然、ポリフェノールであるルテオリンもこのような作用の報告があります。
それ以外にも、
- インスリン抵抗性の改善(インスリン抵抗性とはインスリンが分泌されても正常に作用しない状態で、糖尿病に繋がります)
- 抗肥満作用
- 高尿酸血症の抑制
などがあると考えられています。
しかし、上の様な効果は、「考えられている」だけで実際にあるかどうかは未だだ研究段階です。主に試験管で行った結果であったり、マウスなど動物で検証した結果。費用や倫理的な問題などが大きな壁となり、人間を対象にした例は多くありません。
マウスなどの動物での結果があれば可能性を感じますが、試験管レベルであればさらなる検証が必要です。生物を試験管では忠実に再現できませんので、実際に人間で行ったら全く効果がなかったなんてことはよくある事です。
ルテオリンの働きは?
ルテオリンが実際に体内でどのように働くのかは未だよく分かっておらず、現在研究がなされています。また、抗肥満作用と抗酸化作用では、ルテオリンが作用している場所や効果が現れるメカニズムが異なるなど非常に複雑です。
例として、抗肥満作用やインスリン抵抗性の改善に対しての考えられているメカニズムを挙げてみます。ルテオリンは、代謝遺伝子の調節因子に作用することで、遺伝子発現を調節し効果を示していると考えられています。
遺伝子の発現は転写因子によって調節されています。遺伝子発現とは、遺伝子(設計図)からモノ(タンパク質など)を作ること。この何かを作る作業を調節しているのが転写因子です。
簡単に例えると、ガスコンロの中火を普通の状態とすると、強火にすれば早くお湯が沸き、逆に弱火にすればお湯が沸きにくくなります。この火の強さをコントロールしているのが調節因子で、ヒトでは無意識に自動的に調節されています。
ルテオリンは転写調節因子に作用し、細胞内で脂肪酸などをつくるタンパク質の合成を抑制する一方、脂肪や糖を分解しエネルギーに変えるたんぱく質を増やします。細胞内で脂肪が作れなくなると、それを補おうと代わりに血中の脂肪を取り込むようになります。血中の脂肪が減ると、動脈硬化といった血管疾患のリスクが減る可能性があります。また脂肪分解や糖の分解が促進されれば抗肥満やインスリン抵抗性の改善が期待できます。
ヒトでは男性ホルモンや女性ホルモンなどのステロイドホルモンなども転写因子に作用する事が知られています。大豆イソフラボンが女性ホルモンの様な作用があるということを聞いた事があるかもしれません。これも同様なメカニズムによるものです。
【まとめ】
ルテオリンは植物にポリフェノールでフラボノイドの一種。自然界では、シナロシドなど、配糖体の形でも存在しています。
ルテオリンは、抗肥満や抗動脈硬化作用など、さまざまな生物活性が報告されていて研究がなされています。ヒトに対して有効かなど、わからない点も未だ多いですが、非常に興味深い成分です。今後の研究に期待です。